■たわごとですかーっ!!■



▼【危ういゾーン】 03/09/20

我々の住むこの世界には、トライアングルゾーン、エリア51など科学では説明し切れないエリアが数多く存在する。しかしそれは果てしなく遠い国の出来事のようにも思われ、何か実感の湧かない世界なのである。
しかしそれはごく身近な区域にもあるのではないか。例えば、会社の事務所である。

平日の日中、一見するとそこはいつもと変わらない就業中の会社の風景である。
ここにその摩訶不思議なゾーンがあると言うのか。
「ない!」
それじゃ、話が終わってしまうのである。

一人の社員が行動を起こした。事務所内を歩き始めたのだ。そして、ちょうどコピー機の前を通過したときのことだ。それは突然起こった。

「ぴよ、ぴよ、ぴよ…」
いったい何事だ。一瞬何が起こったのか理解できなかった。
見ると、その声を発しているのはその社員ではないか。しかも無表情ときてる。
つまり、ポーカーフェイスで「ぴよ、ぴよ、ぴよ…」だ。

それだけではなかった。
まるでひよこを思わせる「ぴよぴよぴよ」の声と同時に、両手を腰の横で小刻みに震わせる。それはまさに羽を羽ばたかせるような手つきだ。
なんて徹底しているんだ。
感心している場合ではないだろう。
そんな光景がひとしきり目の前で展開されたその後、まるで何事もなかったかのように彼は仕事を再開したのである。

オレは何か悪い夢でも見ているのだろうか。いや、これは現実なのだ。けっして、この現実から目を反らしてはいけないのだ。

それだけではなかった。
ある平日の日中、男はおもむろに歩き出した。場所はまたあのコピー機の前だ。男がそのゾーンを通過する。何か無性に嫌な予感がする。

「ぺったん、ぺったん、ぺったん…」

なんだ、それは…
見ると、付箋紙を貼っているのである。
付箋紙を貼っていると言うだけなら何ら問題はないだろう。だがしかし、付箋紙を貼る度、「ぺったん、ぺったん」言うことは、ないじゃないか。
しかも無表情だ。
確かに、ゲラゲラ笑いながら「ぺったん、ぺったん」もどうかと思うが、怒り心頭で「ぺったん、ぺったん」も何か違うような気がする。
この場合は、無表情で「ぺったん、ぺったん」が正解のようである。

なにしろそれは延々と続く。どうやら本人にその意識はないようだ。
それもこれも、その症状が発生するゾーンはコピー機の前である。
この分だと、またここで何かが起こるに違いない。非常に不安な日々が続くことは想像に難くないのだ。
しかし、ここを通過しない分けにはいかない。コピー機があるからである。
いまやコピー機のない仕事など考えられないのである。
こうなったら、覚悟して掛からねばなるまい。いつ、オレのこの身に降り掛かってもおかしくないのだ。それもこれも会社のためである。

いや、まてよ。
あごに手を当て、足を組み、視線を上げ冷静に考えてみると、その症状が現れる人間はある程度限定されているのではないか。
ある程度と言うか、決まり切っちゃってるよ。

癖である。
たんにその人がちょっと変わっていると言うだけのことですよ、あんた…
誰だ、あんたって。

我々の住むこの世界には、科学では説明し切れない人間が存在する。
オレもまたその一人なのか。
聞かれても困ると思うけど。

byクムラ〜


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