■たわごとですかーっ!!■
▼02/12/21【うるとらへの思い】 大切なものを失う。それを思うとしばらく何も手に付かなくなる。 そんな虚脱感をもたらす出来事が誰しもあるものである。 そして、その時自分自身何もできなかったという情けなさもまた同時に襲ってくるのだ。 それはいつのことだっただろう。最近のことではないような気がする。その時、手に持っていたのはウルトラセブンのソフビ人形だ。 お気に入りのウルトラセブンである。いつもそれを肌身離さず持ち歩き、遊んでいたのだ。 なにしろ無我夢中にセブンで遊ぶオレ。どんな遊び方なんだ、それ。 とにかく没頭していたため、廻りのことはまったく目に入らないし気が付かなかった。ちょっとどうかと思うほどの集中力であると言える。 そしてそれは唐突に訪れた。 オレ自身、油断もあったのかも知れない。 もう少し早く気付いてさえいれば、という悔いが今でも残る。 ふと気付いたときにはすでに遅かった。 野良犬である。 野良犬が今まさに近づいて来ようとしていたのだ。 あまりにも突然のことだったため、慌てて近くの木に飛び乗った。 これでまずは一安心。 しかしホッとしたのもつかの間、重大なことに気が付いた。 大事なセブンのソフビ人形が手にないではないか。 見ると、もうどうにでもしてくれとばかり、バンザイしたセブンが地面に横たわっている。 オレとしたことが何という過ちを犯してしまったんだ。 「どうか無事でいてくれ、セブン」 オレは心の底からそう祈った。 しかしすでに犬は足下をうろうろしている。 とにかく大事なセブンを見殺しにするわけにはいかない。 こうなったら、できるだけのことはしなければならないだろう。 今置かれた状況を肝に命じ最善を尽くすのがオレのモットーだ。 そしてオレは意を決し、持ち前の機転を効かせ、心の雄叫びをその犬に向けて浴びせたのだ。 「しっ!しっ!」 だがしかし、、、効かないのだ、「しっ!しっ!」が… 何度繰り返しても野良犬は涼しい顔をしている。 なんたることだ、いままでこんなことがあっただろうか。 もしかしたら「しっ!しっ!」は、その犬にとっては免疫となっていたのかも知れない。 それじゃあ、「がっ!がっ!」はどうだとか「ぶっ!ぶっ!」はどうかとか思ったのだが、そんなことをあれこれ考えているうちに、犬は去って行っちゃいました。 セブンをくわえて… オレは犬に向かって、「おーい、おーい」と呼んでみたが、いまひとつ積極的になれなかった。 だって、戻って来ちゃったら困るからさ。 結局オレはただその犬の後ろ姿を見送るしかなかったのだ。 犬にくわえられるウルトラセブン。 おまえのどこがウルトラなんだ。 それ以来、セブンに対するオレの評価は急降下した。 ひとつ大きなウルトラを失った、そんなほろ苦い思い出であった。 byクムラ〜 |