■たわごとですかーっ!!■
▼02/09/01【ゴキブリ、北海道の場合】 9月である。 夏も終わりを告げる季節である。 昔の夏の思い出と言えば、昆虫採集にいそしんだことなど思い浮かべるのであるが、その土地土地の風土の違いにより、生息する生物の違いもまたあるものである。 自分は北海道出身である。 冬の寒さは厳しいし、北海道には梅雨がない。 そう言った気候風土からだろうか、カブト虫はいなかった。 だからカブト虫はペットショップでしかお目に掛かれないのだ。 「どうして、ここにカブト虫がいないんだい」 人一倍虫を愛するオレである。北海道の気候風土を恨んだものだ。 それじゃあ、カブト虫の替わりにゴキブリはどうだと言われても、実のところゴキブリもいなかったのだ。 ゴキブリはある意味、カブト虫よりも貴重である。なぜならペットショップに行っても見ることができないのだから。 オレのゴキブリとの初対面は、就職して上京してからだ。住んでいた東京のアパートだった。 なにやら、壁をのそのそ這いあがるものがいる。 それがゴキブリであった。 普通なら感動の初対面である。狂喜乱舞してそのゴキブリを捕獲し舐めまくるように観察したことだろう。 しかしその頃のオレはすでにあの頃のオレではなかった。 昆虫熱もすっかり覚め、手に虫アミなど持たないクールな男になっていた。フッ……なぜ気取る。 だから、初めて見るゴキブリを目の前にしても、「ああ。これがゴキブリってもんか」程度のそんな存在でしかなかった。 そのときオレは改めて、「オレも大人になったもんだぜ」と感慨深げに思ったものだ。 思えばゴキブリのいない北海道に住んでいたときは、ゴキブリホイホイなど見たこともなかった。 しかしどうして、CMはあったんだ。 合点がいかない。 我が家にゴキブリホイホイはなかったのだが、それと良く似たものがあった。 その名もチュウポン。 ゴキブリホイホイは読んで字のごとし、ゴキブリをほいほい捕る商品である。 だったらチュウポンはチュウをぽんぽん捕る商品。 チュウと言えばこれだろう。 荒井注 荒井注をぽんぽん捕って、どうしろってんですか。 そもそもいまどき誰が知ってるんだ、こんなドリフのメンバーを。 チュウと言って思い浮かべるものは、普通ネズミだろう。 つまり、ネズミをぽんぽん捕る商品なのである。なんてありがちなネーミングなんだ。 うちの実家は実にネズミが良く出た。むしろ住んでいたと言ってもいいだろう。 四六時中、天井裏からネズミの這いずり回る音が聞こえる。 毎晩毎晩、ネズミの大運動会である。 そんな中で寝るやつの身にもなって見たまえ。 「おい、もう少し静かにやってくれないか」 そう言ったところでネズミからの返事はなく、それはそれで虚しい気持ちにさせられたものだった。 そこでチュウポンである。 それはまさに、ゴキブリホイホイのネズミ版である。 箱のなかにはネズミの好きな匂いやエサが付いていたのだろう。 しかし、匂いやエサが付いていただけではなんの意味もなさないのは知っての通りだ。 当たり前である。ただネズミを喜ばせるだけだよ、それ。 そこで粘着液である。 そこに入ったが最後、くっ付いて離れられないのだ。 何というおそろしさ。 そんなもの、人間版があったらいったいどうしたらいいんでしょう。 やだよ、くっ付いて離れないのは。勘弁してください。 そんなことを考えただけで、身の毛もよだつのだった。 しかし、人間版などあろうはずもなく、ただの取り越し苦労である。 なんて心配症なんだ、オレは。 そして、、、 仕掛けたよ、仕掛けた。 ちょっと残酷な気もしないでもなかったが、我が家の生活を守るためには致し方ない。 ある日、仕掛けたチュウポンを確認するため天井裏に上がった。 しかし、そこにあるはずのチュウポンがないではないか。 いったいどうした分けだろう。 確かにオレはここに仕掛けたのである。 あんな大きなものをネズミが持っていけるはずもなかろう。 ふと窓の外を見る。 あったよ、あった。あったが動いている。 そこには、トコトコと呑気そうに歩く猫の姿があった。 その猫の背中にくっついているもの、それはまさにチュウポンであった。 ネズミを追っている矢先に付いてしまったのだろうか。 だからって、ネズミまでくっ付けることはないじゃないか。 ネズミがチュウポンに付いたままなのである。 そんなものぶら下げてどこに行くんだおまえ。 ネズミをぶら下げ歩く猫。 それはちょっとどう言ったらいいんでしょうか。 猫はきっとこう言いたかったのではないか。 「どう?おいらのこのストラップ」 オレはやだな、そんな野生味あふれたストラップは。 byクムラ〜 |