■武蔵を語る■


【第46回 宿敵!柳生宗矩】

睨み合う、武蔵と兵庫之助。まさに一触即発の状況である。
と、そのとき、二人の間に分け入るものが…
見れば、お通である。
「なんてことするんだ、あんた…」
お通に向かってそう言わずにはいられないオレなのだった。
だってそうだろう。相手は兵庫之助である。確かにお通は以前、兵庫之助に色々とお世話になったかも知れない。しかし、それはもう過去の話だ。いまはれっきとした敵なのである。
しかもその光景はまるで、ひとりの女を巡って争う二人の男ではないか。

お通が二人の間に分け入ったのは他でもない。やめてくれ、と言うのだ。とにかく、お通がいたのでは二人とも手が出しようがない。
仕方なく、刀を下げる二人なのだった。

「兵庫之助様、ありがとうございます」と土下座するお通。
そして、去ろうとする兵庫之助に武蔵は呼びかける。
「宗矩殿とお会いしたい」
「なぜ?」
「問いたいことがあります」
「いずれ使いのものをよこす」そう言って兵庫は後にした。

突然、又八の屋敷に朱美の母、お甲が訪ねてきた。てっきり死んだものと思われていたが生きていたのである。しかし、肝心の朱美の居所が未だ分からない。
そして又八はお甲と共に美濃に行く決心をする。美濃は朱美の生まれ故郷だからだ。
しかしこのご時世である。それは非常に危険な旅である。案の定、二人は追われる身に。
それにしても、大坂から美濃は遠いよなあ。たとえ名古屋からでも歩いて行く気になれやしないよ。

なかなか兵庫之助の使いが来なく心配する武蔵。もしやすっぽかされたのでは…
お通は言う。
「兵庫様は約束は破らない」
兵庫之助も高く買われたものである。

ある日やっと兵庫之助から使いの者がやって来た。そして、武蔵は柳生家へ向かう。
お通は半ば覚悟していた。もう武蔵と会えないかも知れないと。

兵庫助に迎えられ、宗矩と面会する武蔵。
そして会うなり兼ねてから宗矩に問いたいことをいきなり切り出したのだ。
「趣味はなんですかぁ?」
そんな超が付くようなオーソドックスな質問をするために、わざわざ柳生まで来たのか。違います。
かと言って、ちょっと趣向を凝らし、
「お風呂はどこから洗いますかぁ?」などと言う、そんな質問を宗矩にする奴がどこにいるんだ。
武蔵が宗矩に問いたかったことはそんなことではない。分かってると思うけど。
「なぜ村を敵としたのか。女子供まで命を落としたのだ」
そう言う武蔵に向かい、宗矩は、おもむろに刀を抜いた。そして、その刀を武蔵の足下へ放り投げる。
「事が大きくならぬうちになくする。それが政だ。そんなに憎いのならその刀でわしを切って見ろ」
武蔵は、その刀を手にし、そして宗矩の首筋に向かって斬り付けた。
瞬間、兵庫之助の刀も武蔵の首筋へ。
それぞれの首筋の寸前でピタッと止まる二つの切っ先。
しばし緊迫の場面…
刀を引く武蔵。

朱美はやはり美濃で暮らしていた。
そこへ、探し歩いていた又八とお甲が辿り着く。感動の再会である。
それにしても、これほど簡単に見つかるものなのか。この時代の人間の勘の良さは、ちょっとどうかしている。

又八は朱美の子供を抱いた。このとき初めて自分がこの子供の父親であることを実感したのだ。

冬の陣は終わった。しかし、まだまだ世の中は混沌としているのだった。
そんな中、武蔵は再び宗矩と相対することを決意する。

byクムラ〜



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