■武蔵を語る■


【第45回 冬の陣開戦!】

何やら大坂はバタバタしている。バタバタである。バタバタしていると言っても、暮れも押し迫り、正月の準備で大わらわと言うわけではないし、ましてやそこいらじゅうを鳥がバタバタと飛んでいる分けはないじゃないか。そんな平和な話ではなく、戦が近づいて来たのである。

武蔵とお通は村を離れてから又八の屋敷でやっかいになっている。又八はいまや多くの従業員を抱える一端の商人の主人である。すっかり立派になってしまった。誰がこんな又八を想像しただろうか。武蔵もお通も想像しなかっただろうし、オレにだって想像出来やしない。原作の又八はまた違うのだし。

兵庫之助は宗矩に言う。
「柳生に帰る」
いきなりである。それを聞いて憤慨する宗矩。だってそうだろう。これからまさに戦が始まろうとしているのだ。猫の手だって借りたいくらいなのである。
兵庫之助の手は猫の手か。それは兵庫之助に失礼だし、考えようによっちゃ猫にだって失礼なのではないか。じゃあ、どの手だと言われても、そんなことにはこの際こだわらないで頂きたい。

兵庫之助は宗矩に仕えるとは言ったものの、宗矩に対するわだかまりは次第に募る一方なのである。それは徳川とは何の関わりもない武蔵村を潰したことへの疑念である。しかし宗矩は言う。
「戦のない太平の世を作るには小さいものを犠牲にしなければならないこともある。なぜ、おれの気持ちを分かろうとせぬ」
いつの時代も同じである。それは今で言うところの戦争なのだろう。暗にこのドラマのテーマとしようとしていることは、まさにこれなのではないか。

朱美のお腹はどうかと思うほど大きくなってしまっている。餅の食べ過ぎなのか。どれだけ食べたら、そんなに大きくなるんだ。そんな分けはないのである。それじゃそのお腹の中にあるのはなんだ。お腹の中にいるのは紛れもない、子供である。又八の子供に違いないのだ。
そんな状態で延々と旅を続けている朱美。疲れもピークに達している。しかも巷では侍どもが女狩りをしている。そんな物騒な世の中を気丈に歩く朱美なのだった。

そして、ついに合戦が始まった。
又八は売り物の鉄砲を運び出す段取りを始めた。又八の鉄砲は徳川方にすっかり目を付けられているのだ。いまではすっかりお尋ね者の又八なのである。
そんな又八にひたひたと危険が迫る。又八を狙うのは兵庫之助である。
ある日の夜、又八の屋敷に侵入する兵庫之助。そして兵庫之助と目が合う又八。又八は逃げる。それを追う兵庫之助。縁側を跳び降り、ばたりと倒れ込む又八。追いつめられた。そして、兵庫之助の剣がまさに又八を斬り付けようとしたその瞬間、武蔵が飛び込んできた。間一髪である。
「どけ!どかぬとそなたを斬る」と兵庫之助。
「どかぬ」
刀に手を掛ける武蔵。
ついに武蔵vs柳生、世紀の対決なのか。

byクムラ〜



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