■武蔵を語る■


【第44回 お杉逝く!】

表題の通り、ついにお杉が逝ってしまうのである。奇しくも第44回である。これほど逝くのに適した回があるだろうか。ある。19回、即ち、”いくかい”である。しかし、19回じゃ早すぎる。だってそうだろう。19回である。まだドラマの半分にも達していないじゃないか。お杉が本領発揮する前に逝ってしまえば、このドラマも台無しではないか。したがって、こんなことにこだわるのはもってのほかと言えよう。誰だ、こだわってるのは…
ボクです。

お杉は、又八と共に武蔵村を出たのである。もっとも二人だけ出たのではない。村人すべてが出ざるを得なくなったのである。それは兵庫之助の忠告によるものであった。
お杉は、もう一度故郷の本位田家へ帰ることを夢見ながら、又八の背中で逝ったのである。まるで、おんぶお化けのように。
可愛くないなあ、そのおんぶお化け。

村を出て行く人々を寂しそうに見送る武蔵、権之助、三之助。そして最後に武蔵とお通が村を出た。
そしてその後、惨劇が始まる。村を出た人々が襲われるのである。女、子供も容赦ない。まさに無差別。朱美の母、お甲までもが切られてしまった。
これじゃ、何のために村を出たのか分からないじゃないか。
事態の異変に気付き慌てる武蔵。

そこへ「武蔵!」と声を掛ける者がいた。
気さくに声を掛けられれば普通、「やあ!」と返事をするのだろうが、見れば相手は亜矢である。
亜矢は宗矩の手下であり、したがって愛想良く返事をする相手ではないのである。
言い掛かりをつける亜矢。ついに亜矢との対決である。
亜矢は兼ねてから武蔵との対決を望んでいた。厳流島の決闘においても勝った方と戦いたいと所望していたのだ。そして、それがついに実現した。
しかし、いざ戦ってみれば、武蔵の敵ではなかった。なんの雑作もなく刀を突きつけられる亜矢。それにしてもなぜ亜矢は本来得意としている怪しげな術を使わなかったのか。亜矢なりに何か思うことがあったのだろうか。

刀を突きつけられた亜矢は観念する。そして、いままさに武蔵に切られようとしたその瞬間、背後から「切らないで!」と言う叫び声。
お通である。あれだけの村人が殺されたと言うのに、武蔵を止めるお通。ちょっと甘いんじゃないですかい。
「切れ!切れ!」と叫く亜矢。「切らないで」と頼むお通。武蔵は葛藤する。そして、武蔵はお通の言葉を選択し、刀を下ろした。
そして武蔵は亜矢に向かい言う。
「行け…」
亜矢は自害しようと短刀を懐から取り出した。その刹那、武蔵はそれを奪い取り、亜矢の頬にびんたをはる。
びんたである。げんこつはいけないし、お尻ぺんぺんはもってのほかだ。
だってそうだろう。げんこつはことのほか痛いのだ。お尻ぺんぺんはその点、安全かもしれないが、お尻を押さえ泣きながらそこを去る、その情けなさは、こういう場合どうなんだ。どうなんだってこともないけど。
こんなとき、女性にはやはりびんたが適切なのである。
叫きながら、そこを去る亜矢なのだった。

村人の亡骸がそこらじゅうに横たわっている。まさに地獄絵のようである。
見るとなんと、三之助まで死んでいるではないか。
三之助が死ぬのはちょっとまずいのではないか。確か三之助はのちの伊織だったはずである。武蔵の養子となり、武蔵の死後、武蔵の功績を後世に伝える重要な役割を果たした人物である。それとも、三之助は伊織ではなかったと言うのか。すでに原作度外視のドラマに何を言っても始まらないのだろう。
なにしろ、三之助を抱え泣き崩れる武蔵とお通なのだった。

武蔵は怒りの境地に達する。なんとしてでも柳生宗矩に問い詰めたいのだ。なぜ、村をつぶしたのかと…

そしてついに、大阪冬の陣へ。

byクムラ〜



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