■武蔵を語る■


【第40回 信じる心】

世の中は新たな戦いの波がひたひたと押し寄せてきていた。
そんなときにダイコンを抜き、喜びはしゃぐ、武蔵とお通。
なんて呑気者なんだ、あんたたち。

そんな呑気者の元へ三之助が訪ねて来た。
三之助は相変わらずの偉そうな口振りで武蔵に向かい言う。
「ここにおいてくれ、何かの役に立つはず」
「居たいと言うなら居ていいぞ」と武蔵。
かくして三之助も呑気村の一員である。
いまや、お杉婆も百姓仕事に頑張っている。その顔は充実感で一杯なのだった。

沢庵和尚からの伝言が武蔵の耳へ入った。池田輝政が病気で危ないと言う。池田輝政は姫路城の城主であり、武蔵は昔そこで多くのことを学んだ。輝政は宮本武蔵の名付け親でもあるのだ。

早速、武蔵は見舞いのため姫路城へと赴いた。
さぞかし、危ない状況なのだろうと思いきや、以外と元気そうである。
治ったのだと言う。ドラマではあっと言う間かも知れないが、実際のところ、武蔵は姫路城までの道中、何日も掛けて行ったに違いないのだ。
元気な輝政の姿を見、武蔵は安堵する。
「今は土を相手に修行しております。己よりも大きなものが大地にあります」と武蔵。
「深き心よりなせる言葉、わしもそう思うぞ」
その後の自分の運命も知らず、武蔵の成長に目を細める輝政なのだった。

柳生屋敷では、宗矩と兵庫之助が深刻な面持ちで向かい合っている。
「心は決まったか」と宗矩。
「はい。叔父上の手足となって働きます」
明瞭な返答だが、よほど悩んだに違いない。
さらに続けて宗矩の目を見据え言う。
「一揆集を切った際の修羅場を決して忘れぬよう願いたい」
直に血を見るのは現場の者である。その苦悩を分かってくれと言いたいのである。

少しののち、豊臣側の屋台骨である池田輝政を始末せよとのお達しが出る。その後、輝政の容態が急変。そしてそのまま帰らぬ人となった。
兵庫之助の仕業である。見舞いの品に毒を入れていたらしい。
城の使いが慌てて兵庫之助を追う。その使いをいとも簡単に切る兵庫。

その事態を受け、豊臣秀頼は真田幸村の元へ使者を出した。幸村の力を借りるつもりなのだ。
真田幸村と言えば、家康が最も恐れた人間として有名である。
「すべての者が徳川に立ち向かって行かねばならぬ。」
腹を決める幸村。

それを縁の下で立ち聞きする者がいた。亜矢である。宗矩お抱えのスパイである。
早速、宗矩に伝える亜矢。
亜矢に問い掛ける宗矩。
「わしの手をどう思う」
いきなり、手をどう思うと聞かれても、白魚の様ですとも、グローブの様ですとも、なかなか答えるわけにもいかないだろう。そう思いつつモジモジしていれば、ちょっと意味が違ったらしく、本来言いたかったことはこうだ。
「俺の手は何も汚していないと兵庫に言われたが、どう思う?」
やはり兵庫のあの言葉が気になっていたのだろう。
そんな宗矩に亜矢は言う。
「じゅうぶんお汚しになっています」
だったらさっさと石鹸で手を洗えばいいじゃないか、と思う節もあるかも知れないが、それもまったくお門違いの話であり、ふざけるのもいい加減にしろと叱咤されても致し方ありません。

宗矩はいっそう気合いが入る。
「いまこそ大阪と戦い、豊臣を根絶やしにしなくてはならない」
「手を汚すのは下の者におまかせください」と亜矢。
徳川側ではちゃくちゃくと豊臣を滅ぼすべく作戦が遂行されていたのである。

武蔵は、ある噂を聞く。柳生兵庫之助が輝政の家臣を切ったと言う噂である。そのことをお通に言うが、当然お通はそれを信じない。
以前の兵庫之助を知っている者なら、皆そう思うに違いない。

又八はいま鉄砲を売っている。こういう世の中であるから、その商売は滅法景気がよい。しかし、扱うモノがモノだけに、それに見合った危険も同時に伴ってくる。
そんな又八に朱美は言う。
「鉄砲など売って欲しくない」と…

客先である大野屋敷の高音と言う女に目を付けた又八。
手を出そうとしているその頃、兵庫之助がその大野屋敷に乗り込んで来ていた。
「この鉄砲を持ち込んだのはだれだ」と大野に迫る。
「本位伝又八と言う男だ」とあっさり答える大野。

又八に忍び寄る兵庫之助。
そんなこととも知らずに、又八は高音と言う女に忍び寄っていたのであった。

byクムラ〜



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