■武蔵を語る■


【第39回 武蔵帰還】

小次郎との一戦を制した武蔵は故郷の美作へ向かう。本位田家でお通が待っているはずである。おまけにお杉婆まで待っているのだ。
ふと、ぼんやりすれば、つい小次郎との戦いを回想してしまう武蔵なのだった。

豊前小倉城では城主の忠興が忠利に対し憤慨していた。別におやつを取った取られたで憤慨している分けではない。そんな城主はいやなのである。
巌流島での戦いにおいて、勝った方を殺そうとしたことについてである。
忠利はただ江戸からのお達しだと言うばかりだ。
武蔵に悪いことをしたと忠興。なにとぞ謝ってくれるよう児島備前に頼んだ。

美作の本位伝家へ到着する武蔵。お通との感動の再会である。感激し抱擁し合う二人。
ふと見ると、武蔵の顔が浮かない。どうやら小次郎のことを思い出してしまったようだ。なにもこんなときに…
お通と再会できたんだからいいじゃないか。
しみじみと語り始める武蔵。
「小次郎は言った。見事だ、行け、と。小次郎がここに来させた。果たして俺は小次郎に勝ったのだろうか。そう思った。」
だったら、「はい、そうですか」と言うしかないわけで、そんな武蔵に対し、お通は慰めるかのようにこう言った。「私はまたたけぞうに会えると信じていました」
「もうどこへも行かん」と力強くお通の手を取る武蔵なのだった。
メロドラマである。

そんな気分もことごとく粉砕するがごとく、お杉の登場である。案の定、文句を語り始めた。
「どこへも行かん、と言うことは、この家にいると言うことなのか。だとしたら、ここは自分の家じゃ、又八の家じゃ」と激越な口調で怒鳴りつける。
「他で暮らすと言うことだ」と冷静に武蔵は言う。
すると、今度は、「わしを捨てるのか」とお杉。
いい加減にしろよ、くそばばあ、普通ならば誰しもそう言うだろう。
しかし、二人はこう言った。
「俺達と一緒に行こう」
「おまえとは行かん」
そんなお杉に対し、お通は「もう私は武蔵とは離れません」と簡明に答えた。
「わしを見捨ててか、恩知らずだ、おまえは」
恩を知って欲しいのは、お杉婆、あんただよ、

更にお通は決意のほどを語る。
「恩知らずと言われようが、私は武蔵とは離れません」
もう何も迷いはない、と言った感じだ。前回の失敗は二度と繰り返してはならない。そう自分の肝に命じたのだろう。

「俺はお杉婆をおふくろと思って大事にする。一緒に行こう。」と武蔵。 やだなあ、そんなおふくろは‥
しかし、そうでもしないとこの問題は解決しないのである。
そんな、強引な説得の末、結局一緒に行くことになった3人。

ところで、何処へ行ったんだ3人は…
なにもない土地である。
そこで木を切り、畑を耕し始める武蔵とお通。
「どうして、百姓にならねばならないのだ?」お杉は相変わらずくそばばあである。

いつの間にか、武蔵の周りには人が集まってきた。武蔵を慕って来たのである。慕ってきたと言っても、見たところ武蔵はただ耕しているだけなのである。
更に、気が付けば、小さな村と呼べるまでに人は集まって来たのであった。

柳生宗矩に念願の息子が生まれた。その息子はかの有名な、柳生十兵衛である。

甥の兵庫之助を呼びつける宗矩。兵庫への折り言った話だ。自分のために働いてくれと言うのだ。近々、徳川対豊臣の戦いが始まるだろう。そんなとき、心を同じくできる真の味方が欲しいと言うのである。
いきなりそんなことを言われ戸惑う兵庫。「考えさせてくれ」と一言いい、屋敷を去った。

日々開墾に精を出す武蔵たち。そんな武蔵の元に又八が訪ねてきた。
いきなりの訪問にまるで寸劇チックに大喜びの武蔵と又八。そんな又八は今ではすっかり風格がある。
今度は鉄砲を作り、そして売ると言う又八。徳川でも豊臣でも必要な方に売ると言う。儲けるためには敵味方など関係ない。魂は完全に商人である。

ある日、武蔵はまるで子供がはしゃぐかのように大喜びしていた。お通が何事かと、武蔵の視線に自分の視線を合わせた。
芽である。
この荒れ果てた土地についに芽が出たのである。これまでの苦労が報われた一瞬だった。

武蔵を捜し歩く一人の青年がいた。その名は、あいだなかのしん…
字は忘れてしまいました。たぶん、どうでもいい名前だろう。
なにしろ武蔵を訪ねて来た青年。弟子志願であろうか。しかし、いま武蔵は剣を持っていない。しかし、武蔵が剣ではなく鍬を持つと言うのなら、自分も鍬を持つと言う。
だったら、ピッコロを持つと言ったらどうする。
どうするもこうするもないだろう。こうなったら持つしかないのだ、ピッコロを。
いくらなんでも、武蔵がピッコロはないじゃないか。

とにかく「来る者は拒まず」、と武蔵。
それにしても、いったいこの男の真の目的はなんだろうか?何やら怪しそうな男なのである。

byクムラ〜



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