■武蔵を語る■


【第35回 武蔵 小倉へ!】

小倉に向かう武蔵。目的は、父、無二斎に200石を与えるがためである。
200石である。今で言うと幾らくらいなのだろうか? まさか200円と言うことはあるまい。200円は遠足のこずかいだからだ。
まあ、だいたい400万円くらいと考えられるのではないか。たぶんね。
たったそれだけのために、武蔵はあれほど嫌だった仕官をするのである。
なんなんだろうなあ、それって。

小次郎は相変わらず、立ち会いの日々である。今や、小次郎の強さは万人の認めるところであり、対戦相手も生半可な武芸者では到底相手もしてもらえない状況なのである。
そして、ついには、日本人のみならず、外国からの挑戦者も現れることとなる。
中国人である。
中国人と言えば、中国雑技団だろう。しかし、今回の相手はちょっと違う。
ジャンルが違うからである。
どうやらその相手は中国武術の達人らしく、その技のキレは物凄いものがある。
ひとしきり、その武芸者は型をやって見せた。それを見ていた小次郎はひとこと言う。
「偽物めいた武芸が嫌いだ」
立ち会いが始まる。
中国武芸者の曲芸の様な剣捌きに対して、小次郎のそれは、なんとも静かである。と言うか、でんと構えている。
小次郎は、木刀で応戦。
散々、相手に剣を振らせたあげく、いとも簡単に攻撃を捌き、相手の刀を叩き落として見せた。
まさに、敵なしである。

このままでは相手になる人間はいないのではないか。となると次ぎに考えられるのは、獣か宇宙人くらいしかいないだろう。
そんなものと戦って何になるんだ。

ついに、武蔵は小倉に入った。
入るなり武蔵は感動する。
干してある染め物を見て感動しているのだ。
何をそんなに感動しているのだろう。武蔵はひとこと呟いた。
「なんて綺麗なんだ」
どうやら、綺麗な染め物を見て、お通を思い出しているらしい。
しかしながら、その垂れ下がった染め物、まさかふんどしじゃないだろうな。

そこへ、祇園籐次が現れた。染め物をおもむろに切る、籐次。
染物屋の主人は、悲しそうである。

武蔵に対決を迫る籐次。
よほど武蔵と決着を付けたいようだ。

そして、その決着がついに着く。
籐次を切り捨てる武蔵。
「これでいい…」
そう一言言い残し、籐次はついに逝った。
武蔵に切られることで悔いのない人生としたかったのだろうか。

又八と朱美はすっかり文無しである。
せっかく仕入れた木材を半ば幕府の強制でただ同然で買い取られたのだ。
それでも朱美は強い。少しでも商売の身になればと、道に落ちているものを拾って歩くのだ。
そんな中、偶然、母のお甲に見つかる。
そのでかい屋敷は、お甲の住まいだった。
お甲は娘の朱美がよほど不憫だったのか、屋敷から衣服等を持ち出し、それをおもむろに投げ捨てた。そしてこう言ったのだ。
「落ちてるだよ」
いったいどういうことなんだ。
それは落ちているものだから、拾えと言っているのだろう。
なかなか粋なことをする母なのだった。

その品を見て驚く又八。盗んだんじゃないかと問い詰めるが朱美は違うと言い張る。
驚くのも無理はない話で、その品々はかなりの高価品であったのだ。
又八は、その品を売って船を買うと言う。その船で物資を輸送する計画なのだ。
朱美は、また騙されているのではないかと心配する。
そして、その品は実はお甲からもらったものであることを白状した。
お甲の屋敷へ行く二人。しかし、すでにその屋敷はもぬけの殻であった。おっかさんがいなくなった、と泣き崩れる朱美。

一方、故郷美作へと向かう途中、このところ極めて体調の悪かった権爺がついに逝った。それを看取るお杉婆とお通。泣き崩れるお杉婆なのだった。

byクムラ〜



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