■武蔵を語る■


【第29回 小次郎動く!】

「小次郎動く」
どうやら、動いたらしいが、やっと完成したプラモデルが動いて喜んでいる分けではけっしてない。
まあ、そうだろうな。

この手で禄を掴んで見せる。
小次郎はそう言って、仕官への道を誓う。
なぜそれほどまでに仕官にこだわるのか。
お篠である。
小次郎は事あるごとに言う。
「お前を幸せにして欲しいと、死んだお琴は言い残していった」
その「お前」とは、お篠のことに他ならないのであるが、
ちょっと待て、いつまでそんなことを言ってるんだ。んじゃあ何かい、お琴が言うからしょうがなくお篠と付き合ってるってのかい?
それじゃあ、お篠に失礼ではないか。

通常なら、とっくに愛想を尽かされているはずである。
しかし、お篠は文句の一つも言わないのだ。
こんな女いるのか。
現代においてはまずいないと言えるだろう。
しかしこの時代においてはこれが通用するらしい。
それにしても、もてるよなあ、呆れるほどもててるよ、小次郎。
何にも増して、もてるのが一番。

小次郎は細川忠利の屋敷へと足を運んだ。
仕官のためである。
そのためにまずは自分の実力をアピールしなければならない。
それが一番手っ取り早いのである。
だからと言って、自分を売り込むため、日本舞踊を踊るのはどうかと思うし、いきなり、漫談を始めるのもまずいだろう。ここは芸能コースではないからだ。

小次郎は武芸者である。したがって、剣の実力を見せつけなくてはならない。
細川忠利の前で小次郎は立ち会いをした。
相手は槍である。それに対する小次郎は木刀である。通常ならば木刀の不利は否めない。しかし小次郎はこれで十分と思ったのだろう。
案の定、小次郎の相手ではなかった。
これで小次郎は自分の強さを細川忠利の前で鼓舞することができた。
しかし、細川家からの回答は、「仕官の話はまたと言うことで」だった。

ここで宗矩が出てくる。忠利にアドバイスをしたのだ。
忠利は細川家の跡継ぎである。その世継ぎをスムーズに行うための手段として、強い指南役は効果的であると言うことを助言した。
そして、小次郎に更に強い相手を立ち会わせることを勧める。

再び、小次郎は立ち会いをする。
今度の相手はなかなかの実力の持ち主である。なにしろ、小野次郎右衛門と言う、徳川の指南役なのである。
知らないけど…

こんどの勝負はなんと真剣である。危ないったらないのである。
だって、真剣だよ、真剣。ちょっとかすっただけでも大ケガは免れないのだ。
しかし後へは引けない。小次郎には仕官と言う大きな目標があるのだ。

勝負が始まる。
やはりいままでの相手とは少々違う。だがしかし、やはり小次郎の敵ではなかった。
小次郎は伝家の宝刀、燕返しで相手の額、しかも鉢巻きだけを切ってのけたのだ。
何という神業だ。
相手に傷を負わせずして勝負を付ける。これほどの技はないだろう。
オレにもこの技に良く似た技がある。
「ギャグを言わずして、相手を笑わせる」
これもまた神業と言えるのではないか。
笑われてるだけじゃないの、それ。

そして数日後、小次郎に細川家から合格の知らせが来た。
指南役合格である。
合格となれば、大喜びだろう。
バンザイ三唱をするかも知れないし、胴上げだってするのかも知れない。ややもすれば、狂喜乱舞し、道頓堀を飛び込むことだってあり得るだろう。
それほど合格と言うのは嬉しいものなのである。
だがしかし、小次郎は喜んでいない。
どうしたと言うのだろう。小次郎のことである。合格の知らせを聞いて、いきなり我を忘れ狂喜乱舞しバンザイしまくる分けにもいかないだろう。やはりイメージは大切にしなくてはならない。

しかし、どうやら違うようだ。
小次郎は言う。
「100石程度で仕官するつもりはない」と。
100石ではかなり足りないらしい。
しかしこの当時、指南役程度で、千石とか、万石はかなり難しかったらしい。
それでも小次郎は不満なのである。
けっして、自分を安売りしたくないのであろう。
オレなら喜んで安売りするけどさ…


byクムラ〜



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