■武蔵を語る■
【第26回 柳生の誘い】 まずは、お気づきだろうか。 題名である。 いつもはあるはずのビックリマークがないではないか。 これまでは、さしてビックリでもないのに、なんでもかんでもビックリマークだったのである。 だがしかし、今回、そのビックリマークはない。 「柳生の誘い」 もしこれにビックリマークが付いていたら、どうだろうか。 「柳生の誘い!」 物語上、武蔵の心情はこうだっただろう。 「柳生に誘われるなんて、ラッキー!」 しかし、今回、ビックリマークはない。 したがって、こうだ。 「なあんだ、柳生かよ」 武蔵の気の乗らない様子が、読みとれるのではないか。 ビックリマークひとつで、これだけ違うのだ。おそるべし、ビックリマーク。 そんなことはどうでもいい、本題に入ろう。 武蔵はついに江戸に入った。そして、又八を捜し始める。 偶然、伊達家の家臣と出会う。 ここでも武蔵の名は広まっており、伊達政宗がいたく武蔵に興味を持っている旨、会わないかとの誘いを受けた。 そして、正宗と会う武蔵。 正宗のその顔つきといい、話振りといい、いかにも傲慢そうである。 だがしかし… なんか、迫力のない正宗だなあ。 正宗はちょっと変わった刀を武蔵の眼前に見せつけた。イスパニアの商人からもらったものだと言う。まるで、自慢である。 そして、いきなり武蔵に向かって、その自慢の刀を振り下ろした。 なんてことするんだ。 問答無用なのである。 しかし、武蔵はそれを事も無げに交わした。 そんな武蔵に対し正宗は言った。 「気に入った。わしに仕えろ。返答次第では命はない。」 いきなり、「仕えろ」と言い、あげくの果てに、「命はない」ときた。 わがまま加減が半端じゃないのである。 しかし、武蔵はうんとは言わない。 「気が変わったら来い」とひとまず身を引く正宗なのだった。 亜矢である。念のため言っておくが、あややではない。 その証拠に、亜矢がいつも手に持っているのは、葉っぱである。 証拠でもなんでもないけど。 その葉っぱに、なんの意味があると言うんだろう。 けっして蚊を追い払う分けではないし、ましてや、お尻を拭くわけでもない。 どうやら、忍術を使うのに、葉っぱは定番グッズらしい。 葉っぱを持つことにより、「私は忍術を使いますよ」と宣言しているのだ。 したがって、葉っぱを持っている人を見掛けたら、要注意である。 カエルにされちゃうかも知れないからね。 はい、分かりました。 いまや、柳生家の専属伝言係となっている亜矢が宗矩に伝えた。 「武蔵と言う男が江戸に来ている。石舟斎殿がいたく気に入っておられる男」と。 それを聞いた宗矩は、すぐに「連れてこい」と命令した。 正宗の次は、宗矩である。もう、引っ張りだこの武蔵なのだった。 いまだに、ボーっとしているお通である。 しかしながら、又八が武蔵の名を口にするとかすかに反応するお通。だが、まだまだダメお通である。 武蔵は絵を描いていた。何を描いているのかと思いきや、又八の肖像画である。 これがまた、なかなかうまい。 さすが、後に有名な絵画を残しただけのことはある。 武蔵は、又八の肖像画を描き、それを張り出して又八を捜し出そうと言う魂胆である。 それにしても、なぜそこまでして又八を捜すのかが分からない。 いつの間にやら、小次郎はお篠と会っている。隅に置けない奴である。 小次郎は、お篠のことが気になってしょうがないのである。しかし、いま小次郎にはお琴と言う存在がいる。このままほおって置けば、こうなるのは明かだろう。 二人の女をまたに掛ける男。 即ち専門用語で、二股である。 小次郎は、お篠に頼んだ。 自分の廻りをうろちょろしないでくれと… 気になってしょうがないから目の付かないところに行って欲しいと言うのだ。 なんて勝手なことを言うんだ、あんた。 それに対し、お篠は言う。 「私は、私が自分でどこにいるかを決める。私は小次郎様に会えて幸せです。私のことは気になさらずに。」 そうは言っても、気になるわい。 しかし、お篠は小次郎の前から姿を消すことを決心する。 ルソンへ身売りすることを決めたのだ。 ルソンが一体どこか分かって言ってるのか。 オレも分からないよ。 それにしても、決意が極端すぎるじゃないか。 宗矩との初対面の武蔵である。 しばしの剣術談議。 そして、宗矩もまた武蔵に対しこう言った。「自分に仕えぬか」と… 正宗に続き、またも拒否する武蔵。 「この宗矩が敵となる」と宗矩は凄んだ。 ほんとに自尊心の強い奴等である。 しかしながら、本当に自尊心の強いのは武蔵なのではないか。 けっして自分を安売りしないのである。ちょっとやそっとの条件では絶対に仕える気はないのだ。 結果、武蔵は延々と流浪人として過ごすことになるのである。 byクムラ〜 |