■武蔵を語る■


【第21回 必殺の鎖鎌!】

武蔵は通り掛かりに、ある女と出会う。
見るとその女の腰にはなにやら物騒なものが差してある。
「くさりがま」である。
敢えて言っておくが、腐りかけのカマキリではない。そんなもの腰に差してどうしようと言うのだ。
「鎖鎌」と書いて、くさりがまなのである。
鎖鎌とはどんな武器なのだろうか。
「腐り掛けのカマキリを振り回す」
だから、違うってば…
確かに怖いかも知れないけど、それ。

鎖鎌と言う武器。それは、鎌の柄に3mほどの鎖が繋がっており、その先に丸い鉄の分銅が付いているのだ。
武蔵は、噂には聞いたことのある、その鎖鎌を見て、どのように使うのか見せて欲しいと頼んだ。
そして、分銅をブンブン振り回す女。
なんて女なんだ。
危ないったらないのである。
分銅回転半径内は立ち入り禁止であることは言うまでもない。
立ち入り禁止の看板を立てても良いくらいである。
それほど、強烈な武器なのだ。
それを見た武蔵は驚きの色を隠せない。
その女の正体は、後に武蔵と戦うことになる宍戸梅軒のかみさんなのである。

弥次兵衛家の指南役として働いている小次郎の元へ、柳生家から招待の話が来た。
小次郎は言う。
「どうしても俺に会ってみたいと言うのなら出向こう」と。
とことん強気なのである。

そして、柳生屋敷へ出向く小次郎。
柳生宗矩との初対面である。
なぜか、そこに一緒にいるのは、沢庵坊である。
ここにもいやがったか、と言うほど、どこにでもいるのである。
そんな彼のことを、皆こう言うのではないか。
「目立ちたがり屋さん」

小次郎は柳生宗矩に言う。
「この剣は天下無双の剣だと思っている。オレは燕を切ることができる」と。
それに対し、宗矩は聞いた。
「して、何羽切ったのだ、燕を」
間髪入れず、小次郎は答えた。
「1羽」
1羽って、おまえ…
やっぱり、あの1羽きりだったらしい。

宗矩は苦笑いである。
しかし、小次郎は自信満々なのである。

宗矩は小次郎に聞く。
「新陰流は人を生かす剣だ。それでも仕えたいのか。」
更に聞く、「なぜここに来たのだ。」
すると、小次郎から予想通りの答えが返ってきた。
「俺に会ってみたいと言うから来たのだ」
ほくそ笑む、宗矩。

そして宗矩は、俺の矢を受けてみるかと言い出した。
なんとも無謀な話もあったものである。
なにしろ、矢と言ったら飛び道具である。
空を飛び回っている、カモでさえも射られてしまうほどの武器なのである。
しかし、小次郎は後へは引けないのである。それを受けて立ったのだ。

そして、小次郎に向かい、矢を射る宗矩。
その矢は一直線に小次郎の顔面目がけて飛んでいく。
剣を眼前で構える小次郎は、見事、その矢を切り落とす。
まさに人間技ではない。
その動体視力は、ボクサーどころの話ではないだろう。
ツバメどころか、ややもすると、ペリカンさえも切ってしまい兼ねないのではないかという勢いである。
確かにそれは凄いかも知れないが、
ツバメより遅い上に、でかいんじゃないか、ペリカン。

帰宅後、小次郎は、「久し振りに血が騒いだ」と、お琴に抱きついた。
血が騒ぐと、抱きつきたくなるものらしい。

子供をあやす宍戸梅軒。
その姿はただの子煩悩な親父である。
梅軒は、妻から変わった武芸者に会ったことを聞く。そして、その武芸者の名が武蔵と聞いて驚いた。
かつて、武蔵が殺した武芸者に辻風典馬と言う男がいた。宍戸梅軒はその弟だったのである。
したがって、武蔵は兄のかたきなのである。
梅軒に復讐の念が沸き上がった。

木地師で修行していた武蔵は、この家を離れる。
いったいどれくらいここにいたのかは分からないが、2泊3日ってことはないだろうな。
木地師体験ツアーだよ、それじゃ。

「お世話になりました」と木地師夫婦の元を去る武蔵。
武蔵はここで、人と人が共に生きていくと言うことを学んだのである。
そして、ここで作った器をもらい、出発した。
器を持ってどこへ行くんだ、武蔵。

byクムラ〜



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