■武蔵を語る■
【第18回 女心揺れる!】 あかね屋絃三こと奈良井大蔵が山林を行く。目的は何なのだろう。 なにしろ山林である。山林と言って考えられる行動として、山菜取りや、イノシシ狩りなどあるだろう。しかし、最も代表的なものはこれなのではないか。 「カブト虫採集」 ペットショップに持っていけば、ものによれば1匹100円で買ってくれるのだ。 なんて素敵な副業なんだ。 さっぱり大物感がないよ、それ。 そんな大蔵のあとを付ける朱美。 そしていきなり大蔵は穴を掘り始めた。 思い出のタイムカプセルを掘り起こそうとでもしているのだろうか。 そんなもの、どこにあるんだこの時代に。 見るとその穴からはなんと大判小判だ。そこに持ってきた小判を入れ、再び埋める大蔵。それを一部始終しっかり見ていた朱美は、しっかり大蔵に見つかってしまいました。 予想通りの展開と言えよう。 しかし、見つかったからと言っても、特別何かをされたと言うわけでもない。 ただ、又八と共に、命令が下されたのだ。 家康殺しである。 なんともたいそうな任務である。 その目的は何か。 「家康に忍びの力を思い知らせたい」 ちょっと待てよ、君。 家康を殺して、思い知らせる。 バカも休み休み言え。 死んだら、思い知ることなどできやしないではないか。 真の目的は、幕府転覆に他ならないのだろう。 そんなことを又八に言っても何にもならないと思ったに違いない。 武蔵はすっかり有名人になっている。 迂闊に現れれば、サイン責めなのではないか。 偽物まで出る始末である。 それほどの人間になったと感心する又八と朱美なのだった。 お通と城太郎は道すがら奈良井大蔵の店へ寄る。 妙秀のお勧めの店らしい。 なんともとんでもないお勧めの店である。 大蔵はお通を診てあげると言って、術を掛けた。 寝てしまうお通。そして、その後襲うと言う手はずなのだ。 なんともエッチな大蔵である。 そこへタイミング良く、小次郎が訪れた。 しかし、大蔵は店仕舞いの一点張りである。 「オレの連れが見れぬか」とすごむ小次郎。 そんなやり取りをしているうちに、お通は城太郎に起こされてしまいました。 どうでもいいけど、揺すったくらいで起きる催眠術かよ、それ。 なにしろガッカリした大蔵だったが、諦め二人を帰すのだった。 お代を払おうとする城太郎に、「お代はいらない」と言う大蔵。 「いい人だね」 そんな店が今どきどこにあるんだ。 今どきじゃないけど。 とにかくただの薬ほど危ないものはないのではないか。 みんな、まるでバカ者である。 大蔵はお琴の傷を診る。 ひとしきり触って見て言った。 「残念だが刀傷は治せない」 それを聞いた小次郎は憤慨した。 「脅かされてもできぬものはできぬ」、と大蔵。 結局、二人は諦め、店を後にする。 お琴は、悲観するばかりである。 しかし、以外なのは小次郎である。 小次郎は以前お琴の前でこう言った。 「おまえが美しくなくなったら、おまえを捨てる」 そんな小次郎のことである。当然、顔に傷の付いたお琴をきっぱりと捨てるものだと思った。 しかし、違ったのだ。 「オレはおまえを捨てたりしない」 こう言い放ったのだ。 まるでうそつきである。 それはなんとも格好良く、男らしい嘘つきなのだった。 そして小次郎はお琴への思いをこう言った。 「オレはおまえの熱い気持ちが好きなのだ。それがオレの冷たい気持ちを熱くさせてくれるのだ」 オーバーヒート気味である。 相変わらず歩く武蔵。 そしていつの間にか武蔵の前に女が現れる。 姉のお吟である。 いつの間に会いに行ったんだ武蔵。 「かかさまに会いたい」とお吟に頼む武蔵。 そして、沈痛な面もちでお吟は答えた。 「かかさまは亡くなったのですよ、今年の始め。あのときはすでに加減が悪かった。だから会って欲しかった。」 呆然とする武蔵。 そんな武蔵にお吟は諭すようにこう言った。 「人は皆、前を向いて歩いて行くしかない。どんなに悲しいことがあっても…」 上を向いて歩いちゃ、本来いけないものだったらしい。 byクムラ〜 |