■武蔵を語る■


【第13回 一乗寺の決闘!】

お堂に入ったきり出てこない武蔵。
外には、お通と又八、城太郎である。
そこへ、お杉と権爺がくる。
ひとつところに、すっかりメインキャラが集まってしまったのである。
いくら偶然だからって、あまりにも偶然が過ぎるじゃないか。

とにかく誰にも会いたくないと武蔵。そして、皆あきらめその場を離れる。
中でもお通のその落胆様はかなりのものである。

吉岡家は、なんともものものしい。
武蔵一人に、吉岡兄弟がやられたのだから当然である。
祇園藤次は目の色を変え、武蔵との決闘の準備をする。
それを見ていた吉岡清十郎。
「吉岡道場を自分のものにするのか」と藤次に尋ねる。
「そうだ」と間髪入れずに答える藤次。
そうきっぱり言われては、ぐうの音も出ない清十郎なのだった。

今回の決闘は、表向きは兵法者どうしの決闘と言うことになってはいるが、実際のところ、武蔵の相手となる名目人は、清十郎の甥、源次郎と言う、まだ13歳程度の子供である。実際、そんな子供が武蔵相手に立ち会えるわけもなく、実のところ、武蔵を討つためにお膳立てされた合戦とも言うべきものなのである。
武蔵をおびき寄せ、包囲し、弓や槍、果ては鉄砲で武蔵を討つ手だてである。

武蔵に又八は忠告する。「名目人である子供を切れなければ戦いは終わらない」と。
そして、一緒に江戸に行こうと誘う。
しかし、「自分が信じられなくなる」と武蔵は頑として断る。
それにしても、ただこれだけ言うのに、いちいちそこまで力を込めて喋ることはないじゃないか。
それは、武蔵だからなのか、新之助だからなのか、は分からない。
いまに始まったことではないが、とにかく、浮いているよ武蔵。

そうは言ったものの、子供を切れるだろうかと、自問自答し悩む武蔵なのだった。

一方、お通はふらふらである。
とにかくふらふらなのだが、ただの風邪なのか、重病なのか、はっきりさせてくれよ、と言いたい。
「恋の病でした」などと、舌を出されても腹が立つばかりじゃないか。
そして、お通は半ば強引に武蔵に会いに行く。
今にも倒れそうな状態でお通は言う。
「武蔵に二度と会えない気がした」
そう言ったかと思うと、やっぱり倒れるお通。
張りつめた糸が切れたのかも知れない。

お通を抱き抱え、介抱のため川へと連れていく武蔵。
お通に水を飲ませようとする手がお通の唇に触れた瞬間、武蔵は「ハッと」した。
それは、きっとこう言う気持ちだったのではないか。
「君に胸キュン」
武蔵を持ってしても、「胸キュン」である。
並の人間ならば、「胸ギュー」だろう。
なんだ、それ。

「胸キュン」のかいあって、目を覚ますお通。
「今は会っていられない。しかし、おまえのところに戻ってくる。死ぬな」と武蔵。
感激し、涙するお通。
なんてメロドラマなんだ。
まるで武蔵が優しいのである。

又八と江戸へ行くと言い出す朱美。お甲はそれを必死に止めようとするが、その制止を振り切り出て行く朱美なのだった。
あの強気なお甲が呆然とするばかりなのだった。

いよいよ、一乗寺下がり松での決闘の日。
その果たし合いの見物に向かう人々。まるで、格闘技観戦気分である。
到底ひとりで立ち向かう武蔵にこれっぽっちも勝ち目はないと誰もが思う。その死に様を高見の見物なのだ。なんて残酷な人々なんだ。

武蔵には作戦があった。
人知れず、後ろから回り込む武蔵。
そして、意を決し、決死の形相で突撃したのだ。

byクムラ〜



|Back|  |Next|

|Top|