■武蔵を語る■


【第12回 俺は死なない!】

吉岡清十郎の弟、伝七郎との対決である。場所は三十三間堂。
真剣どうしの勝負に敢えて木刀を使う武蔵。これもまた、武蔵の戦術のひとつなのではないか。
敢えて不利な木刀を使う、伝七郎にはその意味が分からないのだ。そして、それが精神的混乱を招くのである。
そして、またも一瞬で勝負が決まる。
あっけなく倒れ込む伝七郎。

考えてみれば、伝七郎の剣術の腕前は、これっぽっちも披露できず終いだったのではないか。なにしろ、染め物を染めているばかりだったからだ。
しかし、実際の伝七郎は、兄の清十郎以上の剣術の使い手だったと言う。

勝負が終わり、遊郭に戻る武蔵。
って言うか、また戻るのかよ。
それじゃあ、生死を掛けた勝負が、ほんの用事足しじゃないか。
そこがまた武蔵の非凡な精神力なのだろう。

再び、太夫の元へ。
血の付いた武蔵の服を洗う太夫。
仮にも祇園一の売れっ子太夫に服を洗わせる武蔵ってのもまた凄い。
洗わせると言っても、無理強いさせているわけではない。
太夫も武蔵に何かしらの魅力を感じていたのだろう。しかし、それが分からない。武蔵が何を考えているのか分からないのだ。

吉野太夫は武蔵に聞いた。
「わたくしを美しいと思われぬのか」
凄いことを言うものである。普通、こんなことを言ったら、とんだうぬぼれ者扱いだろう。それが許されるのも、太夫だからだ。
いや、普通ならばいくら太夫でも言わないのだろう、こんなことは。
やはり、分からないのだ、武蔵が。
それに対して武蔵は答えた。
「美しいものが恐い。美しいものには力がある。俺にはわからん」と。
結局、武蔵も分からなかったらしい。

ものものしい吉岡家。なにしろ二人の当主をやられたのである。
吉岡家の大ピンチである。
これは吉岡一門の戦だ、と息巻く藤次。
武蔵の前に小次郎が現れ、そして、武蔵に忠告する。
「10歳の子供が吉岡家の名目人として立たされる。それを切るしか生きる道はない」と。
そして、かの有名な、一乗寺下がり松の決闘へ。

光悦に刀研ぎを頼むも断られる武蔵。
人を切る刀は研げないと言うのだ。
じゃあ、あんた、なんの刀なら研げるんだ、とちょっと不思議に思うところだろうが、相手が光悦だけに、何を言っても説得力がある。

とうとうお通は武蔵の居所を突き止める。そして、ついに武蔵との再会。
又八もそこにいたのだが、まるで眼中にない。
「ずっと、捜していた」とお通は武蔵に向かって言うも、「いまは会えん!」と叫びその場を去る武蔵。
唖然とするお通なのであった。

byクムラ〜



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