■武蔵を語る■


【第11回 修羅の道へ!】

ついに吉岡清十郎との対決である。
劇中では2度目の対決なのだが、実際はこれが初対決である。
場所は、京都郊外の蓮台野と言う、野っぱらである。

いきなり待ちぼうけを食う清十郎。武蔵のお決まりの常套手段である、遅刻作戦だ。
わざと遅刻し、相手を苛立たせるのである。
正確には遅刻ではなく、最初からその場にいて様子を伺っていた分けだが、清十郎が武蔵の姿を発見したときにはすでに普通の精神状態ではない。
頭に血が上ってしまったのだろう。顔は怒りに満ちている。
勝負は一瞬にして決まった。
武蔵の振り下ろした木刀が、清十郎の肩口に叩きつけられる。
まさに一撃である。もんどり倒れ込む清十郎。武蔵は無言のままその場を立ち去る。

劇中での勝負は二人きりである。しかし、実際にはかなりの見物人がいたらしい。
そりゃそうである。立て札を立てるまでしたのだからかなりの話題になったに違いないのだ。
とにかくこの勝負が無名の武蔵を一気に有名人の仲間入りにした。

いっぽう、武蔵に負けた清十郎は、一命は取り留めたものの肩の骨は粉砕され、二度と剣を持つことはできなくなってしまった。その後、清十郎は出家の道を歩んだらしい。

そして、弟の伝七郎は武蔵への復讐を誓うのだった。
この後、武蔵は吉岡一門との泥沼の対決へと入り込んでいく。

光悦親子と知り合う武蔵。武蔵に芸術の目を開かせた人物である。
光悦は気晴らしにと武蔵を遊郭へと誘う。
初めての遊郭にどぎまぎする武蔵。まったくもってウブなのだった。
この遊郭のトップスターは小泉今日子扮する、吉野太夫である。
しかし、武蔵にはまったくそんなことは関係ない。感心がないのだ。
しかし、吉野太夫は遊郭切っての一流遊女。その太夫に向かって、いきなり、「握り飯をくれ」はないじゃないか。
吉野太夫が琵琶を奏でる前で、堂々と握り飯をむさぼり食う武蔵。
なんて、贅沢なおにぎりなんだ。

しかし、太夫はそれにも増して凄いことをやってのけた。
なにが凄いって、それまで厳かに弾いていた琵琶をいきなり”なた”で壊し始めたのだ。ヒステリーにもほどがあるのではないか。そもそも、いったいいつの間に用意したんだ、そんな”なた”。

太夫は武蔵のその殺伐とした雰囲気を感じ取った。そして修羅の道へと行こうとする武蔵を止めようとする。
太夫に止められたが、「はい、分かりました」とはけっして言わない武蔵。なぜならば、言ったら終わっちゃうからね、この話。
なにしろ武蔵はその制止を振り切って出て行く。
そして、まさに修羅の道へと突入して行くのだ。

byクムラ〜



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