■武蔵を語る■
【第10回 宮本武蔵参上!】 再び吉岡道場へ赴く武蔵。 前回、完膚無きまで叩きのめされた道場である。その相手である清十郎に立ち会いの書状を持参して参上したのだ。 清十郎と面会。名を聞かれる武蔵。 どうやら清十郎は以前の立ち会いのことを覚えていないようだ。 それほど力の差があったと言うことなのだろう。 そして、武蔵は名乗った。 「みやもと むさし!」と。 これまでは「たけぞう」だった。そして初めて公の場で「みやもと むさし」と名乗ったのである。 それは自信の裏付けの証拠でもあるのだろう。 「書状などいらぬ、いますぐ立ち会ってやる」と息巻く清十郎。それを制止する吉岡門下生。 まかり間違って、無名の武芸者に負けなどしたら一大事と思ったのだろう。 なにしろ、武蔵はまだまだ無名である。いま負けたら、それこそ負け損だろう。 なんとかしたい武蔵は立札を立てる。あとは返事を待つのみ。 そこへふらふらとまるでルンペンのような出で立ちの男が現れる。 又八である。 とうとうここまで落ちたかと言うような、そんなざまである。 お通は京への道中、野党らに襲われる。人売りである。 そこへ都合良く現れたのが、あかね屋絃三である。 そしてその、あかね屋絃三に助けられるお通。 そもそもこの、あかね屋絃三ってのは、いったいなんなんだ。 かなり初っぱなから登場はしていたが、原作にはいない人物である。 それと、亜矢と言う女。 柳生家に使えているようだが、この絃三との関係がどうも気になるところだ。 いったいどういう繋がりがあると言うのか。 この二人の繋がりとして考えられることと言えば、そう、二人と言えばこれだろう。 コンビ。 あらかじめ言っておくが、コングではないし、ましてやゾンビでもない。あくまでもコンビだ。 もしやこの二人、以前コンビを組んでいたのではないかと言うことである。 二人の共通点として、術を使うという点が上げられる。今で言うところの、マジシャンとか催眠術師と言ったところか。 しかし、不思議なことに、マジシャン、催眠術師の類にコンビはなかなかいない。 漫才師とか、コメディアンであれば話は別だが、そうでないところを見ると、コンビだった可能性は低いのではないか。 お通は、亜矢から武蔵が京で待っていることを聞く。 そうとなったら俄然元気が出るお通なのである。 そもそも、お通はなぜこの亜矢という女が武蔵のことを知っているのか、疑問に思わなかったのだろうか。 そんなことを思っている余裕などなかったのだろう。気持ちはただ会いたいだけなのだ。恋は盲目とは良く言ったものである。 どうやら、亜矢も武蔵を好いているらしい。 そんな武蔵に対して、皆こう言うのではないか。 「この野郎!」 まったく、羨ましい限りなのである。 京に着く小次郎と琴。 相変わらずのいちゃつきぶりである。 小次郎も小次郎である。こんなに四六時中いちゃつく兵法者など、いったいどこにいるんだ。前代未聞なのではないか。 その小次郎に武蔵を斬ってくれと依頼するのは吉岡門下の藤次である。 清十郎と武蔵の決闘の前に武蔵を消そうと言う魂胆である。 それにもわけがある。藤次は吉岡道場の頭の座を狙っているのである。だったら、名も知れぬ男に道場を汚されたくないだろう。 偶然すれ違う、武蔵と小次郎。 すれ違ったとたんに、何かを感じる二人。 それは、「妖気」か、それとも「臭気」か。 そのどちらでもないし、やだな、そんな「気」は… 強いて言うならば、「殺気」だと思います。 武蔵は言う。 「不思議な男に出会った。明らかにオレを斬ろうとしていた。死ぬ覚悟でなければ倒せぬ、そう感じた。」と。 一方の小次郎もまた、 「斬れば相打ちになるだろう。」 そう言ったのだ。 二人ともお互いの実力をすれ違っただけで読みとったのだ。 それにしても、このドラマ。ストーリーといい、登場人物といい、次第に原作から遠ざかっているのではないか。 なにしろ、男と女が絡むシーンが多い。 これが現代の武蔵像ならば、元来が剛の武蔵に対して、この中の武蔵は柔なのではないか。 くれぐれも、優の武蔵にだけはならないで欲しいと願うのだ。 byクムラ〜 |