■武蔵を語る■


【第9回 おのれを知れ!】

百姓に追われ逃げる沢庵にばったり出くわす武蔵。
その様子はただごとではない。
沢庵はいったい何をしでかしたのか。タマネギでも盗んだのだろうか。
いや、もしかしたら、ニワトリの卵かも知れない。
どっちでもいいけど。
百姓を掴まえ分けを聞く武蔵。
それによると、沢庵和尚は村の橋を造るのに手助けしてくれた上に寄付までしてくれたと言うのだ。
そのお礼をしようと一席用意したのだが、沢庵は逃げるばかりと言うのだ。
そこまでして逃げる必要がどこにあるんだ。
沢庵は、「坊主として当然のことをしたまで」と言うが、宴会のコンパニオンに耐え切れなかったと思われてもしょうがないくらいの逃げようなのである。

ようやく逃げ切った沢庵は、武蔵と面会。
武蔵は柳生石舟斎に会ったこと、そして歯が立たなかったことを打ち明ける。そして話はお通のことに及ぶ。
「おまえのために故郷まで捨てたのだぞ。なぜ一緒にいてやらぬ」と沢庵。
「まだ自分は修行が足りない。自分の心が分からぬのに、人の心が分かろうはずもない」と武蔵。
「人の心を分からぬ者が自分の心など分かるはずがないだろう」と怒鳴りつける沢庵。
冷静に考えてみれば、武蔵の方がもっともなことを言っているのではないか。
だってそうだろう。
カップルで全国行脚修行の旅なんて聞いたことがないのではないか。
おまけに今は城太郎までいる始末である。
修行の旅にアットホーム気分はないだろう。

舟に乗る小次郎。琴と一緒である。
言っておくがここは公園ではない。これから京に行くのだ。
どうしても京の燕を切りたいのだろうが、いつの間にか、琴が付いて来てしまっているではないか。いいのか、こんなところまで来てしまって。
ここで、あの旅芸人のお條と出くわすのだが、見せつけるかのように小次郎に寄り添う琴。琴はとことん小次郎に惚れてしまったらしい。

それにしても相変わらずニヒルな小次郎である。
なにしろ、ちょっとなんとかならんのかと言いたくなるほどニヒルな話し振りだ。
しかし、これが小次郎なのだ。けっして、おー次郎ではないのだ。
考えてもみてくれたまえ。
剣を振りながら「ばけらった」はないじゃないか。

柳生家に沢庵が訪問。どうやら昔からの知人らしい。
ここで、ばったりお通と再会し、驚く二人。
沢庵の話から、ここに武蔵が来たことを知るお通。
なんともばつが悪そうな石舟斎である。
お通は武蔵が京にいることがわかると、いきなり京に向かう。
そこまで急ぐことはないだろう、とも思うのだが、なにしろ制止を振り切り飛び出してしまった。凄い行動力である。無鉄砲とも言うが。

武蔵は沢庵から姉のお吟の所在を聞いた。そして、姉が働く店へ行き、二人は感動の再会をする。
姉から、母も生きていることを聞かされる。
そして待ち合わせ場所へ行くも結局会わずにすっぽかす武蔵。
城太郎に遠慮したのだろうか。それとも、こう思ったのかも知れない。
「オレの母さん、まるでお杉婆のようだったら嫌だなあ」
お杉婆とは、あの又八の母であり、つまるところ、頑固婆さんである。
確かに嫌だよ、それ。
しかし、どっちも違うらしい。ここで母に会ったら自分がいままで培ってきたものがすべてなくなってしまうと思ったからなのだ。

byクムラ〜



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