■武蔵を語る■


【第7回 秘剣!燕返し】

相変わらず、なめた手つきで畑を耕す奥蔵院日観。
そこへまた武蔵が通りかかる。
前回、ここを通ったときは、まさに宝蔵院へ向かう途中だった。
しかし今回、違うのは、宝蔵院から勝利を得たと言う事実である。
だったら通常、その表情は、ニコニコだろう。
ニコニコとまではいかないまでも、ニヤニヤくらいはするものではないか。
しかし、なぜか武蔵の顔色は暗い。
お腹でもこわしたのだろうか。
そう言うことじゃないよ。

なにしろそんな武蔵を見た日観は言う。
「勝負と言うものは、勝っても負けても寂しいもの」と。
武蔵の胸中を察しての言葉なのだろう。

そしておもむろに巾着袋を武蔵に差し出す日観。餞別のつもりだろうか。
なんて気前が良いんだ、日観。
いくらくらい入っているのか気になるところだが、武蔵はそのまま懐に入れてしまった。いいのかよ、中を確かめなくて。
あとで返してくれと言われたら、どうするつもりなんだ、などといらない心配をしてしまうのだった。

一方、柳生家に居候しているのは、お通だ。
ここでいったい何をしているんだ。
どうやら、ただいるだけでいいらしい。
ただいるだけで、中村もんど、じゃなく、柳生石舟斎はご満悦なのだ。
おまけに孫の兵庫之助も惚れちまってる始末だ。
二人そろって、お通にイチコロ、メロメロ状態、なにをやってるんだ。
これだから女は恐い。

武蔵はふと、ある花の茎の切り口に気付く。
その切り口を見た武蔵は、それが並の人間のなせる技でないことを見抜く。
どこがどう違うのか、解説してもらいたいものだが、とにかく凄い切り口であるようだ。
そして、武蔵はそれが石舟斎の仕業だと知ると、無性に石舟斎に会いたいと言う思いが募る。
しかし、武者修行者との立ち会いはしないと言う柳生家の方針のため、中へは入れてもらえない。

この頃、千人切りが巷の問題となっていた。千人切れば、願いが叶うと言うのだ。
その千人切り兵法者退治を請け負う小次郎。
そして、いとも簡単に退治してしまった。
千人切り切りである。
千人切り兵法者を一人切れば千人分の御利益があるのだろうか。なんとも効率がいいじゃないか。

その依頼主の屋敷に招かれる小次郎。
その主人の奥方を見て、驚いた。
死んだはずの許嫁、八重にうりふたつなのである。
果たして、本当にその八重なのか、ただのそっくりさんなのか、それは小次郎にもオレにも分からない。
だって、そんな設定、原作にないからさ。

小次郎の日々の稽古相手は、ツバメである。
なぜツバメなのか。
だってそうだろう。
ツバメを切れば、ツバメ返しの開眼である。しかし万が一、アホウドリなんか切っても見なさい。
「アホウドリ返し」
天下に轟く無敵の大技が、「アホウドリ返し」はないじゃないか。
まったくもって迫力がないのである。
また、ちょいとお手頃だからと言って、「ニワトリ返し」もまずいと思うし、だったらこれは強いだろうと言うことで、星一徹なんか切ったりして、そのあげく「ちゃぶ台返し」はどんなもんなんだ。
なんだか主旨自体が分からなくなってしまう危険性を多分にはらんでいる。
だから「ツバメ返し」なのである。

なにしろ、ツバメはかなり手強い。あまりに手強いので苛つく小次郎。
そして、ついに小次郎はツバメを切った。
なんて可哀想なことをするんだ。しかし、これも秘伝のためである。

なにしろ、ツバメを切ったと興奮する小次郎。
嬉しいのは分かるが、ちょっとどうかと思うほどの興奮のしようだ。
まあ、あれほど苦労した末のことである。まあ、少しくらいの興奮は許そうではないか。
だからって、接吻することはないじゃないか。
接吻と書いて、せっぷんである。今風に言うならば、「チュー」だ。
その相手は、死んだはずの小次郎の許嫁、八重のそっくりさんである。
このあと、どういう展開を見せるのか。それはオレにも分からない。
だから、原作にないんだってば、小次郎のチューは、、、

是が非でも柳生石舟斎に会いたい武蔵。
そして、武蔵の足は、石舟斎への元へと向かってゆく。
すると、どこからともなく笛の音が、、、
こんな夜に笛の音である。
ふと耳を澄ます、武蔵。
このとき、武蔵の脳裏に去来したものはなんだろうか。
「ヘビが来るぞぉ」
そんなことが去来してどうするんだ。
その笛の音の主は、お通である。
果たして武蔵は気付いたのだろうか、そこにいるお通の存在を。

よりいっそうトホホ振りの勢いが増す又八は、行きずりの男に埋蔵金発掘の誘いを受ける。
誘惑に弱い又八である。案の定、その誘いにまんまと乗ってしまう。
そこからまた、新たな展開が始まるのだ。

byクムラ〜



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