■武蔵を語る■
【第5回 一から出直せ!】 お甲、朱美親子の元を離れる又八。しかし、又八のトホホ振りは、ますますエスカレートするばかりだ。 偶然のお通との再会。許嫁であったお通が、なぜ自分ではなく、武蔵を追い求めているのか、又八にはその理由が分からない、なんともたわけな又八なのである。 お通という許嫁がいながら、お甲へと身を翻した又八。お通は、敢えてそれを問いただそうとはしない。せめてもの情けなのだろう。 しかし、それがいけないんだよな、きっと人間ってやつは。 結局その情けによって誤解が誤解を招くことになっていくのだから。 その後、お通は又八と別れ、武蔵を追って再び一人旅なのだが、なにしろ女の一人旅である。冷静に考えて見れば、それはちょっとあぶなっかし過ぎるってぇの。 男の一人旅だって危ない時代である。それをなんですか、笛一丁持って女一人でのこのこ歩いてるんですか。凄いな、その肝っ玉。 ややもすれば、並外れた世間知らずとでも言われ兼ねないのではないか。 案の定、その予感は的中し、お通はチンピラに絡まれる。そして都合良く現れる柳生兵庫之助に助けられる。しばらくお通は柳生家で安穏と暮らすことになるのだ。 いつの時代も美人は得だよ。 一方、山で修行に明け暮れる武蔵。故大山倍達も山篭りの際は、木を相手にし稽古に明け暮れたと言うから、まさにこんな感じだったのだろう。 だがしかし、この武蔵の場合、それとはちょっと違うように見えてしまう。 もう少し、演出的に凄みを出すとか、逼迫感を出すとかできなかったもんだろうか。 これじゃ、修行と言うよりも、山を駆けめぐって木を振り回し、遊んでいる様にしか見えないじゃないか。 いや、遊んでいると言っては少し語弊があるかも知れない。「やけになっている」と言った方がいいかも知れない。 「ちょっと嫌なことがあったので、やけになり、ただ闇雲に棒を振り回している」 ちょっと嫌なことあった程度にしか見えないのはまずいなあ。 何はともあれ、自らの実力を試すべく、武蔵は宝蔵院へ。 途中、武蔵は老人に出くわす。 畑を耕しているその老人は、奥蔵院日観である。一見見た所、ただのもうろく爺さんである。しかし、武蔵がその近くを通っただけで、殺気を感じ、よろめいた。それほどの爺さんなのである。 なにしろとてつもない達人の爺さんである。それは分かった。 だがしかし、なんだ、あの鍬の使い方は。 とにかくまるでやる気のない鍬の動き。 畑を耕すと言うよりも、ただ畑の土を撫でているだけじゃないか。 農家の人が見たら、いったいなんと言うだろう。 「何年そこを耕せば気が済むんだ」 きっとこう言うに違いない。 いや、もしかしたら逆にこうも言えないだろうか。 畑を耕すより、むしろそばを通る武蔵にすっかり気を取られていた。 そう考えると、まったく凄みも何もあったもんじゃない、それこそただの爺さんな分けだけれども。 ストーリー上どうだっていいそんなことが気になってしょうがないのだった。 byクムラ〜 |