■たわごとですかーっ!!■



▼【続 ストーブは憩いの空間なのか】 06/01/15

小学校の時分、クラス当番のひとつにストーブ当番なるものがあった。
読んで字のごとし、ストーブに石炭をくべる係である。
どこに書いてあるんだ、そんな言葉。
そもそも何だ、「くべる」ってのは。
「くべる」って言葉自体使うのがとてつもなく久々だし、いまや方言なのかどうかも知る由もないが、まず石炭以外に使いようのない、いわゆる石炭用語と言えるのではないか。
無理に使おうと思えば、ご飯をくべる、とか、砂糖をくべる、とか使えないこともないかも知れないが、それはあまりに無理矢理であり、誰も相手にしてくれない、つまり無視されるのは明白なので止めた方がいいです。

なにしろストーブ当番である。
その任命方法は普通の当番とは少々異にしている。この当番、よほどの物好きでも無い限り立候補などするはずもなく、それはそれでしょうがないと言えばしょうがないのだが、要はストーブに一番近い席の生徒がなるのである。
席替えの際、ストーブに一番近い席に決まった生徒がまず思うことはこうだ。
「あっ、オレってストーブ当番?」
この席に決定し誰もがまず思うことはこれであり、実に安易な選定のしかたであるが、利には適っていると言えよう。しかしながらその安易さに比して責任はかなり重い。
その責任重大なことと言ったら、学級委員長の比ではない。なにしろ教室みんなの暖房を担っているのだ。ミスすれば命取りにもなりかねない。命はちょっと大袈裟かも知れないが、ややもすれば、数多くの鼻垂らし小僧を生んでしまう。それほどの重要任務だったと言えよう。

まず第一に、ストーブの火を絶やしてはいけない。全神経は常にストーブの中の火に注がれるのだ。したがって、授業など落ちついて聞いていられるはずがないじゃないか。
あまりにも神経を集中し過ぎて、まるでストーブと一心同体になった気分だ。
可能であるならば、いっそストーブを着てしまいたい気分である。
やだなあ、ストーブと一心同体は。

何度もストーブの中をチェックし石炭を補充する。あまり早くてもいけないし、面倒だからと一度に多くでもいけない。火力が強すぎるからだ。これではストーブに近い生徒はたまったものではないし、見れば顔面は真っ赤なゆでだこ状態である。

ストーブには蒸発皿なるものが載せられている。皿と言っても、ブリキ製の大きなタライの様な容器なのだが、そこに水を張ってあるのだ。
本来の目的は、教室内の乾燥を防ぐためだっただろうと思われるが、もう一つ重要な使用目的がある。これもまた冬には欠かせないことだ。
「牛乳を温める」
つまり、給食の牛乳を蒸発皿の湯の中に入れ、暖めるのだ。
しかしながら、これがまた難しい。温度調整を失敗するととんでもないことになる。牛乳瓶が割れてしまうのだ。
牛乳瓶を割ってしまう、この罪は大きい。何も言い訳は出来ない。完全な管理ミスと指摘されてもしょうがないだろう。なにしろ給食時に牛乳がないのだ。
牛乳がないことによる弊害は数々あるだろうが、代表的なことはこれだろう。
「喉つまり」
牛乳がないことにより給食のパンをのどに流し込めない生徒が続出する。これによりどれほどの喉詰まり児童が生まれたかわからないだろう。
そこかしこで、友人の背中を叩く光景が展開される。ああ、なんて微笑ましい友情愛なんだ。

この様に、火力が弱いことにより、はな垂れ小僧が発生し、火力が強いことにより、喉詰まり児童が発生する。
これらのことからこの任務の重大さが分かろうと言うものだが、はっきり言って、これほど割の合わない当番はないよ。

byクムラ〜



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