■たわごとですかーっ!!■



▼03/02/02【博士になる人々】

人はなぜこれほどまでに博士になりたがるのだろう。永遠の憧れとでも言うのだろうか。つい自分のことを博士だと思ってしまいがちになるのだ。
ちょっとした自信、それがそうさせるのだろうか。

ここになにやら困っている人がいる。どうやら何か書き物をしているようだ。眉間にしわを寄せ何やら考え込んでいる。そして、うわごとの様に何か独り言を呟いているのだ。
「どうだっけなあ、、、あ・い・さ・つ、、、」
なにやら、あいさつで困っているらしい。
しかしながらこの人はけっして挨拶の仕方を忘れた分けではない。したがって、「こんにちは」とか「こんばんは」とか、ましてや「ぼんじゅーる」とか言えば済む問題ではないのだ。
そう、この人は「挨拶」という漢字を忘れてしまったのである。

字を忘れた人の出現。
そこで、「そら来たオレの出番だ」と登場する輩は必ずいるものである。
そして「挨拶」という字はこうだとばかり、ひとしきりレクチャーしたその後に彼はこう言うのだ。
「オレって、漢字博士だからさぁ」
博士って、おまえ…
一瞬、我が目を疑った。
目の前にいるのはまぎれもなく「博士」
まさかこんな身近に博士がいたとは。

だがしかし、それは誰が言ったものでもなく、その称号を与えたのは彼自身である。
自分で自分に称号を与える。
自分で自分を誉めるランナーもいるくらいであるから、あながち珍しいことではないのだろう。
このように、人はしばしば漢字博士になる。

一般的に、巷の博士と言えば漢字博士のことを指すだろう。しかし巷の博士が漢字博士だけかと言うと、とんでもない。

例えば代表的な博士として、「ちくわ博士」の存在もけっして無視することはできないだろうし、その他にも「しじみ博士」や「カメ虫博士」、はては「お茶目な博士」など、もう、どうだっていい博士が勢揃いである。
どうだっていいかも知れないが、これらも立派な博士である。それを認めないのはちょっとまずいのではないか。

しかし、自分で自分をちくわ博士と認識していたところで、ちくわ博士を公言する場がどの程度あるのかと言うと疑問が生じる。
なにしろ「ちくわ博士」である。

昼時、皆で弁当を食べていたとしよう。ふと見ると、おかずの中にちくわが入っている。数少ないチャンスが彼に訪れた。そしてそれを見た瞬間、彼はこう言ったのだ。
「オレはちくわ博士だ」
いきなりである。
そんないきなりな博士宣言を聞いて、そこに居合わせた人間はどう思うだろう。きっと皆、こう言うのではないか。
「ちくわがどうした」
そうひとこと言った切り、皆黙々と弁当を食べ続けるばかりなのである。

なにしろ博士という名誉な称号以前に、これほど恥ずかしく孤独な博士はないのではないか。
なぜならものが、ちくわだからだ。
だがしかし、それを超越したとき人は本物の博士になるのだ。
博士になるのはそれほどのことなのである。

でも、やだなあ、ちくわ博士。

byクムラ〜


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