■たわごとですかーっ!!■



▼02/06/29【声を掛ける】

顔見知りの人間を偶然ある場所で見掛ける。
しかし、その人の名前がどうしても頭に浮かんでこない。そんなことが誰しもあるのではないか。
初対面の相手であれば、「お名前は?」と聞けば済むことである。
しかし、ただ道を歩く初対面の人に向かって、いきなり「お名前は?」ってのはどうした了見だ。

なにしろその人とは会ったことが確かにあるし、名刺も交わしたことがある。しかし、それほど頻繁に会うことはない。そういった場合にそのような問題は発生するのではないか。

向こうが先に気付いてくれさえすれば、それほど問題になることでもない。
しかし、先に気付いたのはこっちであり、性分的にも黙って見過ごす分けにもいかない。
だが、出てこないのだ、その人の名が。
問題は、相手の名前が分からなかった場合、その人に声を掛けるとき、いったいなんと呼べば良いのかと言うことである。
そうしたとき、まっさきに思い浮かぶ呼び方はこれだろう。

「おまえ」

いきなり、おまえってことはないじゃないか。
「おまえ」はちょっと威圧過ぎである。
しかし、「おまえ」はちょっとなんだからと言って、「さん」を付ければいいという問題でもなく、「ちょっとそこのおまいさん」などと呼んだところで、「あちきのことで?」などと返答されてしまいがちになり、それはそれで困り者である。

他に代表的な呼び方として、「あんた」や「そなた」「そち」など、あげれば切りがないほどあるが、切りがないのにそれに見合った言葉がないのだ。

とにかく考えれば考えるほど適当な呼び名が出てこない。
そうなるともう、最後はごく自然に出てくる言葉しかないのだろう。

「やあ」

しかし、気付いてくれない。
手を上げないといけないのかも知れない。
そりゃそうだろう、手を上げない「やあ」ほど、間の抜けた「やあ」はない。
直立不動で「やあ、やあ」言ったところで、なんの効力があると言うのだ。
やだよ、そんな「やあ」は。
なにしろ「やあ」と「手を上げる」はワンセットである。

その辺を肝に銘じ、今度は手を軽く上げて言ってみる。
「やあ」
しかし、まだダメだ。
声が小さいのかも知れない。
おもっきり腹の底から声を出し、そして手を一直線に上げ叫んだ。
「やーっ」
周辺の人々が一斉にこっちを振り返る。
皆そろって、「こいつは何者だ」とでも言いたげな怪訝そうな顔をしている。
声を掛けられたその当人さえもが、、、

byクムラ〜


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