■たわごとですかーっ!!■



▼01/12/29【気付かないことの幸せ】

長い間それに気付かなかった、といったことは誰しも経験があるのではないか。
たとえば自分の場合、それは玄関だ。
実家の玄関は引き違い戸であった。開けると、ガラガラと音のする、あれで ある。
ある日玄関の鍵が壊れたということでそれをつっかえ棒で代用することにした。内側からつっかえ棒をし内鍵の代わりにしたのである。よく使う手である。
しかし、応急のつもりで使っていたそのつっかえ棒は、いつしかそれが応急であるこ とは忘れられ、すっかりごく当たり前の鍵としてその地位は築きあげられて いたのである。まさに無欲の出世と言えよう・・・棒が出世かよ。
しかし、その平穏な日々は長くは続かなかった。

ある日の早朝、「ごめんくださ〜い」と玄関からおばさんの声。当然、まだ鍵が掛かっている時間である。玄関の方へ出て見る。
すると、な、なんと・・・

開いちゃってます。

引き違い戸のいつも出入りしてる側とは反対側の戸からおばさんがこっちを 見ているではないか。こともあろうに笑っている。
オレは言った。「そっち側は違うよ」
そんなことを言っている場合じゃないじゃないか。
いま問題なのは「開いちゃう」ことだ。なにしろ反対側は開いちゃうのだ。
そのとき始めて、そのつっかえ棒がまったくの無力で、でくのぼうであったことを思い知らされたのである。
しかし、それにまったく気が付かなかったのだ。こともあろうに一家揃って。
これほど豪快なまぬけ話がかつてあっただろうか。

誰も気付かなければ、まったく問題にならない。
しかし、それに気付いたときに襲われる言い様のない情けなさ、そしていま まで何事もなかったことへの安堵感とそれに対する感謝の気持ちは言い知れぬものがあったに違いない。まことにありがとうございます。

そのときオレは放心状態の家族を元気付けるように自信満々で提案した。
「外からもつっかえ棒をしよう」
・・・・・・・
「そっかあ!」としきりにうなずき感心する家族。
とことんアットホームな一家である。


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