■たわごとですかーっ!!■



▼01/11/23【突如としてその男は現れた】

何気ないいつも通りの朝の出勤風景。人はよどみなく流れ、スーツ姿の会社員や学校へと急ぐ学生たち。まったく平和な朝の風景である。
そんなごくありふれた日常の風景から突然、人々を恐怖のどん底に落とし込 む、そんな人間、男が目の前に突如現れた。
その男の出現は、いつもなら平穏に流れる時空を、グニャリとねじ曲げるに十分な 威力を放っていたのである。
その男はいったいどういう人間であったというのか、、、

「後ろ向き」

そう、後ろ向きに歩いているのだ。
ただごとではない。ひたすら後ろ向きなのだ。
なぜ、なぜなんだ。自問自答しながら、じっとその男を目で追う、しかしなにもわからない。一体全体、なにが彼をそうさせたのか。どういう事情があると言うのだ。
見ると、顔は運良く無表情である。何が運良くなのか。だってそうだろう、覗いた顔が薄ら笑いなんか浮かべてたりなんかしたら、脱兎のごとく逃げ出すしかないじゃないか。
なにしろ、あまりのそのひたむきさに声も掛けられない。いや、声を掛け、その反応を知るのがなんだか恐いのだ。なんて臆病者なんだ、このオレは、、、
百歩ゆずって、もし声を掛けたとしよう。いきなり、後ろ向きのまま向かってこられたら、どう対処したらいいと言うのか。後頭部に向かって、「初めまして」では、ちょっとどうかと思うし、まして相手はポーカーフェイスだ。心の内が分かろうはずもない。
「目は口ほどにものを言う」とは言うが、「後頭部は口ほどにものを言う」とは言わないのではないか。それが後頭部たるゆえんであろう・・・どの辺がゆえんなんだ?

なにしろ、ひたすら後ろ向きで歩き続ける男。
考えれば考えるほど、分けが分からない。
しかし、ひとつだけこれだけは言えるのではないか。
人間、丸のものを四角と言わなければならないときがある、ということだ。
それが何を意味するのか、それはオレにも皆目分からない・・・だったら言うなよ。
要は、人間には、けっして曲げてはならない信念が必要だと言うことだ。
ひとつ勉強になった。ただこんな信念はきっぱりいりません。

そうこうしているうちに突然、その男はなんの前触れもなく声を発したではないか。

「オーライ、オーライ」・・・

その男に続いて塀の陰から現れたのはダンプだった。


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