■たわごとですかーっ!!■



▼03/02/16【できずぎらい】

人にはそれぞれ特徴がある。
だからこそ、それが個性として形成されているのであるが、身体的特徴といったものは、人の印象を決定づけると言った意味においても非常に重要な要素を占めている。
なかには、その人のその部分だけを見て、それが誰であるか分かるような、そんな特徴を兼ね備えた人もいる。
例えば、「頭が妙にとんがっている」とか、「膝小僧が小僧と言うには無理があるほどでかい」とか「肩から毛が生えている」とか、そんなやつにはなかなかお目に掛かれない。
いたら教えてもらおうじゃないか。

その身体的特徴と言ったものは、このオレにもしっかりある。
しかしながら、それはちょっと見た目には分からないくらいのものである。
それは、指である。
指が曲がっているのである。
足の指ならまだいいのかも知れないが、曲がっているのは手の指であり、右手の小指だ。正確に言うと、曲がってはいるのだが、結果的に曲がってしまっていると言った方がいいのかも知れない。
そもそもなぜ曲がっているのか、それは生まれつきではない。
幼少の頃、何を思ったか、ストーブを掴んでしまったのだ。よりによってストーブを相手に選んでしまったらしい。なんとも無謀極まるばかりである。
皆さんも知っての通り、冬のストーブは熱い。それがオレにはとんと分からなかったようだ。
ストーブを掴んでその時平然としていたかどうかは分からない。
しかし、熱いだけに、よほどのことになるであろうことは容易に想像できる。
案の定、ストーブを掴んだ手の皮はめくれ、小指の皮が内側でくっ付いてしまった。ちょうど手のひらから見ると、関節が一つ分少ないように見える。

まだ小指だけで済んだから良かったものの、へたすればそれこそ、野口英世の再来とでも言われ兼ねなかったのではないか。
そんなレッテル貼られても見なさい。その後の人生においてオレの重荷はどれだけ計り知れないものになっただろう。
「野口英世あんぽんたんバージョン」
そんなの嫌だよ、オレは。

とにかく一度曲がってしまった小指はどうしようもなく、その後も永遠に曲がったままである。
しかしながら小指が曲がっていることにより、何か不都合があったかと言うと、実際それほどのことはなかった。ただ一つのことを除けば。
楽器である。
小学生になって最初に持たされる楽器と言えばカスタネットだろう。
よほどのことがない限り、マラカスを持たされることはないのではないか。
仮にそんなもの持たされて見たまえ。歌を歌う人を見たらつい「シャカシャカ」振ってしまうではないか。
そして歌う人は、つい気分が良くなってしまう。
なぜなら、マラカスを振ってくれるからだ。
方々でマラカスをシャカシャカ振る小学生はいかがなものか。

なにしろまずはカスタネットであり、次ぎにハーモニカへとランクアップする。
まだここまでは問題はない。問題は次へのランクアップである。
縦笛。
小学生で持たされる縦笛は、スペリオである。正式にはソプラノリコーダーと言うらしいのだが、そんなの最近知ったぞ。
とにかくうちの学校ではスペリオで通っていた。

それの何が問題なのか。
笛の穴に指が届かないのである。右手の小指であるから、最後の穴である。
それゆえ、いつも笛の穴は半開き状態であった。
口が半開き状態ならまだ許せるだろう。
「ちょっと間抜けずらで笛を吹く男」くらいで済むからだ。
しかし、いま半開きなのは、笛の穴である。
まともな音が出るわけなかろう。
これですっかり音楽嫌いとなったオレは、笛の演奏の時は、口パクならぬ笛パクで通してきたのだ。

それでも体は成長し、指も曲がっているなりにも次第に大きくなってくる。
そしてついにきた。縦笛の最後の穴に小指が届くようになったのだ。この日をどれほど待ち望んだことだろう。
そう喜んでいる矢先、中学生になって与えられた笛が、アルトリコーダーってことはないじゃないか。
気が遠くなるくらい途方もなく長いよ、その笛。

オレの音楽嫌いは更に続いた。

byクムラ〜


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