◆スペシャル肥料・・・食事中注意◆
それは、夏もそろそろ終わりを迎える台風シーズン真っ盛りの、とある自分の仕事場でのことであった。廻りはたんぼに囲まれており、そこには仮設のトイレが1個置いてあった。イベント会場や建設現場などに置いてある、ユニット式のあれである。 ラジオからは今日の夜半頃、台風が上陸するかも知れないというニュースが流れていた。 そしてその予想通り台風が上陸したのである。かなりの強風だった。そして次の日の朝、いつも通りそこへ行ってみると、あるはずの仮設トイレが見あたらない。まさかこんなもの盗む奴もいないだろう、などと思いながら、もしや、と思い一段下がったたんぼを上から覗くと、なんとそのトイレ、見事横になって落ちているではないか。昨夜の台風にあおられたのである。たんぼの持ち主に知れては大変と、慌ててズボンの裾をめくり、たんぼに入った。するともう匂いが凄いのなんのって、中身を全部ぶちまけちゃっているからもう大変。肥やしの大盤振舞状態である。そんな悠長なことを言っている場合ではない、もう必死にトイレを引っ張った。 どれくらい時間が掛かっただろう、なんとかトイレを田んぼから引っ張り上げ回収。「やった、、、」漂う異臭以上に、安堵感と達成感が自分の心の中に渦巻いた。 このたんぼでできる米、それはまさしくオレが蒔いた肥やしでできる米である。「でも絶対食べたくないな。」ウンチまみれのオレはしみじみそう思うのだった。 数週間後、このたんぼの、ある一角の稲は妙に長かった。 |