<昼飯を求めて>
もうかれこれ30分も走っただろうか。 後輩のア太郎が昼飯をご馳走してくれるというので、ア太郎の運転する車で目的地を探してさまよっていた。 「ア太郎、こんな田舎じゃそう飯屋なんかないよ、戻ってホカ弁でも 食べよう」いいかげん疲れた調子で俺がそう言うと、「いや、もう 少し行けばきっとあります」ときかない。 このア太郎、けっこう間が抜けていることで有名なのだが、どこか憎めないキャラクターでもあった。 さらに30分ほど走り、「もうどうでもいいや」となかば投げやりになっていた矢先、「あっ、かつどん屋がありました」といきいき としたア太郎の声。 駐車場に入ったその店の壊れかけの看板に書いてある文字、それは 紛れもなく”がまかつ”であった。 |