切ないアヒルの物語
の昔、うちには一羽のアヒルがいた。名前はガーコ。
ガーコと言うからには、メスであり、ニワトリよりも一回り大きい卵も毎日産んだ。
うちに来たときには、すでに大きかったのだが、なかなか良くなついて、自分なんかにも付いて歩くほどだった。

ある日、近所の友達が、うちのガーコを見て、「あれ〜、アヒルって普通、いつも水の上で暮らしてるんじゃなかったっけ?この鳥、ほんとにアヒルなのかあ。」などとうちのガーコを侮辱する発言。
こころなしか、ガーコの顔も曇ったように見えた。(どんなだ?)
そういや確かに、オレ自身うちのアヒルが泳いでいるところなんて見たことないなあ、などと思いながら、無性にアヒル本来の自然に生活している生き様を見てみたくなった。「よしっ、ガーコ行ってみるかっ!」
さっそく、うちのガーコを連れて近くの池へ赴いた。
「どうだ、見て見ろ、ガーコよ。この雄大な水の調べを、、、
おまえの足ヒレもさぞかしうずいていることだろう。
そら、思いっきり、その池の命に包まれて泳ぐんだ。
これが本来のお前の姿だ」
そう言って、ガーコを池へと解き放った!
と、その瞬間、ガーコはまるで、池が自分を飲み込むのではと思うほど、慌てふためき逃げ上がってくるではないか。
こ、これは、、、
それから何度となくトライしたが、結果は同じであった。
ま、まさか、、、うちのアヒルがまるでアヒルじゃないなんて。
そうである。うちのガーコは正真正銘筋金入りの金づちだったのである。

それから2度とその池へ、オレもガーコも赴くことはなかった。